「いつも通り全員で戦う」四中工、20年ぶり頂点へ

決勝へ向け、最後の調整に余念がない四日市中央工の選手ら(8日、駒沢陸上競技場で)=竹田章紘撮影

 「ベンチにいようが、ピッチに立とうが、いつも通り全員で戦う」。
第90回全国高校サッカー選手権大会(読売新聞社など後援)は、9日に東京・国立競技場で決勝を迎え、
三重県代表の四日市中央工が20年ぶり2度目の全国制覇に挑む。

 レギュラー11人のうち8人は1、2年生で、「最後の一戦」となる3年生の大半は控えに回る。
それでも、選手たちの気持ちは一つだ。キックオフは午後2時5分――。

 8日、東京・駒沢陸上競技場。約2時間のパス・シュート練習を終えたレギュラー陣とは別に、
控えの3年生部員たちが黙々とボールを蹴り続けた。

 「入学した時から、僕らの学年は『強くない』と言われてきた」。2番手GKの平野龍一選手(3年)は話す。
全部員89人のうち3年生は20人いるが、当初から1、2年生が主力だった。

 「悔しさを絶対に表には出さないようにしよう」。昨夏のインターハイから、控えの3年生たちは
誰ともなく試合前のスポーツドリンクの準備などを積極的にするようになった。

 試合会場に向かう前、3年生だけで独自に円陣を組むようになったのもその頃だ。「自分たちのサッカーをしよう」「勝って戻ってこようぜ」。
一人ひとりが、声を出す。レギュラーMFの国吉祐介主将(3年)は、「チームの雰囲気が少し変わった気がした。
個人的にも、あいつらの存在がありがたかった」と振り返る。

 樋口士郎監督(52)は、「3年生が力を引き出してくれるおかげで、下級生はのびのびとやっている。
控え選手がチームを支えてくれている」とたたえる。

 FW田村翔太選手(2年)とともに6得点ずつを挙げ、大会の得点王候補になっているFW浅野拓磨選手(2年)は
「先輩たちに『決勝も頼むぞ』と言ってもらった。そんな思いに応えるためにも、自分のゴールで優勝を決めたい」と力を込める。

 決勝の相手は、昨年12月の練習試合で1―2で敗れている市立船橋(千葉)。累積警告で国吉主将を欠くという不安材料はあるが、
平野選手は言う。「1、2年生には思い切ってプレーしてほしい。僕らも、いつでも出られる準備はできている」

 引き分けで2校同時優勝だった20年前を越える悲願の単独優勝を、チーム一丸でつかみ取るつもりだ。

(2012年1月9日  読売新聞)