第90回全国高校サッカー選手権で7日、三重県代表・四日市中央工のイレブンが20大会ぶりに国立競技場のピッチに立った。
沸き立つスタンドに「四中工」を全国に知らしめた前監督がいた。城雄士さん、71歳。「またここに立ってくれるなんて。
感無量だ」選手たち、そして今、チームを率いる教え子の指揮を見つめた。
城さんは95年まで32年間、サッカー部を指導した。選手権で優勝1回、準優勝2回の実績を残し、多くのJリーガーが巣立った。
その「黄金期」ともいえるのが92年だった。元日本代表の中西永輔さんら「四中工三羽ガラス」を擁し、帝京(東京)と両校優勝を果たした。
樋口士郎監督(52)は、その3年後、城さんの後を継いだ。以来、選手権で3回、8強入り。
だが、これまで高校生イレブンの憧れ、「国立」でプレーできる4強には届かなかった。「城先生の功績がとても重たかった」
先月28日、チームの壮行式があった。「私の記録を超える単独優勝で、大きく羽ばたいてほしい」。
城さんは、そんな気持ちで樋口監督を送り出した。92年の決勝戦で着たコートと、選手の父母たちが着けた鉢巻きを頭に巻いた。
照れ臭かったが、「何とか力になりたかった」。
7日、樋口監督の指揮のもと、「国立」のピッチで戦う選手たちに城さんは声援を送った。「本当に良くやってくれたね」。
ゲームを制した選手たちの姿に、スタンドで目を潤ませた。【谷口拓未】