四中工 接戦制す

桐光学園に1―0 先制点守り8強

激しく競り合う四日市中央工の坂(中央)=川崎公太撮影
前半、シュートを放つ四日市中央工の井手川(左)

 全国高校サッカー選手権大会(読売新聞社など後援)の3回戦8試合が行われた3日、県代表の四日市中央工は、
横浜市のニッパツ三ツ沢球技場で、前回大会4強の桐光学園(神奈川)と対戦。1―0で接戦を制し、ベスト8進出を決めた。

 四日市中央工は前半、井手川らを中心にゴールの機会を狙うと、31分、
中央からドリブルでゴール前に切れ込んだ森島が相手GKの動きを冷静に読み、右足でボールを蹴りこんで先制点を決めた。

 後半は攻め込まれる場面があったものの、相手のFKをGK高田が好セーブで防ぐなどの守備を見せ、先制点を守りきった。

 樋口士郎監督は「全国大会の独特の空気がチームを成長させてきた。
相手のプレスや攻守の切り替えを警戒していたが、うまく対応できた。
もう一つ勝って、ぜひ国立競技場に行きたい」と笑みをこぼした。

(2014年1月4日  読売新聞

四日市中央工MF森島司(1年)
スタンド観戦した昨年の悔しさ倍返し!

ゲキサカ 1月3日(金)20時53分配信

[MOM959]四日市中央工MF森島司(1年)_スタンド観戦した昨年の悔しさ倍返し!

写真: FBN (ゲキサカ)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.3 全国高校選手権3回戦 四日市中央工1-0桐光学園 ニッパ球]

「触るなぁ!! オッケー! オッケー!!」

 ピッチ上に大きな指示の声が響く。前半31分、叫んだのは、四日市中央工のMF森島司、1年生。
指示を受けたのは、3年生でチームのエースであるFW井手川純だった。

 この場面、DF大辻竜也(3年)からボールを受けた森島は、寄せの速い桐光学園の裏をかくことを意識していた。
このときも、トラップで大きくボールを弾ませ、相手の背後をとろうとした。
しかし、ボールは予定より大きく弾み、最終ラインの裏に残っていた井手川の下へと転がった。
その井手川がボールに寄ろうとしたところで、あの指示である。

「(井手川が)オフサイドポジションにいたのは知っていました。触ったらオフサイドになると思ったので、咄嗟に声が出ました。
あの時間帯は中盤のところにスペースがあって、比較的自由にプレーできてボールもつなげていたので、
この時間帯に点を取りたいなと思っていました。良い縦パスが入ってきて、ああいう形で点を取れたので良かったです」

 GKとの1対1を確実に仕留めた森島が、チームに先制点をもたらした。後半に入っても、密集の中から前線にパスをつないだり、
サイドでドリブルを仕掛けたりと、堂々としたプレーを見せた。1年生の活躍を樋口士郎監督も喜ぶ。
「あの子は常に顔が上がっている。技術も高いですし、戦術眼もある」と、能力を評し「この大会を経験して、
たくましさが出てきた感じしましたからね。あの指示も、1年生とは思えないですよね(笑)」と、
選手権という大舞台で、成長している様子を喜んだ。

 森島自身も、「三重県予選でも試合に出ていたのですが、選手権は雰囲気が違っていて。
1回戦は困りましたけど、2回戦から徐々にできるようになって、今日もボールによく触れて、良い感じになってきました。
自分の特徴は、トップ下の位置で受けて、ラストパスを出すことですが、この大会は結構、ドリブルが良くて。
ああいう形で今日はゴールできましたし、前の試合でもアシストできました」と、手ごたえを口にする。

 4歳年上の兄である、森島大は2大会前に四日市中央工が準優勝したときのベンチ入りメンバーだった。
その兄が朝練に行く姿などを見て、四日市中央工業に行くことを決めていた森島は、
昨年の2回戦で四日市中央工が桐光学園に2−4で負けた試合をスタンドで観戦していたという。
それもあり「自分のゴールで勝ててよかった」と、顔をほころばせ、「ここまで来たら、優勝したい」と、『兄越え』に闘志を燃やした

(写真協力『高校サッカー年鑑』)


四中工、リベンジ8強 全国高校サッカー

2014年1月4日

桐光学園に勝利し、喜ぶ四日市中央工イレブン=ニッパツ三ツ沢球技場で

写真

 全国高校サッカー選手権四日目の三日、県代表の四日市中央工(四日市市)は
三回戦で神奈川県代表の桐光学園と戦い、1−0で勝ち、二大会ぶりのベスト8入りを決めた。

 四日市中央工は前半31分、MF森島が、ドリブルで突破し、右足で決めて先制。
その後はGK高田とDF坂、DF後藤の両センターバックを中心とした守りでしのいだ。

 四日市中央工にとって桐光学園は前大会の初戦で敗れた因縁の相手。
前回も出場した坂圭祐主将は「先輩からもリベンジしてほしいと言われ、ひとつはクリアできた。
まだまだ先があるので頑張りたい」と話した。

 準々決勝は五日午後二時十分から、埼玉・浦和駒場スタジアムで大阪府代表の履正社と戦う。

◆MF森島、ドリブル突破

後半、ドリブルで攻め込む四日市中央工の森島司選手=ニッパツ三ツ沢球技場で

写真

 決勝点となった四日市中央工のMF森島選手のドリブル突破。
FW井手川選手へのパスはオフサイドと判定されるおそれがあった。
「行くな、行くな。俺が行くから大丈夫」。
森島選手は前方への長めのドリブルを蹴りだすとともにさらにダッシュし、右足を振り抜いた。
前半31分、四日市中央工が先制した場面。相手監督も抗議する微妙な判定だった。

 森島選手はFW小林、MF木下の両選手とともに樋口士郎監督が「一年生トリオ」と呼ぶ期待の星。
「技術は高いし、常に顔を上げて、グラウンド全体を見つめている」と信頼を寄せる。

 前大会で敗れた桐光学園戦。
前線へのパスを出す自分の「仕事」を冷静に実践することを心掛けた延長線上にゴールが生まれた。

 樋口監督は「相手に支配される展開を考えていた。
正直、ここまでのびのびとプレーしてくれるとは」とチームとして、選手個人としての成長を喜ぶ。

 二年ぶりの国立まであと一勝。森島選手は「頑張ります」と謙虚に語った。

中日新聞 山口登史)


桐光学園に雪辱! 四日市中央工が2大会ぶり8強進出

ゲキサカ 1月3日(金)20時50分配信

[選手権]桐光学園に雪辱! 四日市中央工が2大会ぶり8強進出

写真: FBN (ゲキサカ)

[1.3 全国高校選手権3回戦 四日市中央工1-0桐光学園 ニッパ球]

 第92回全国高校サッカー選手権は3日、3回戦を各地で行い、ニッパツ三ツ沢球技場の第1試合では、
四日市中央工(三重)と桐光学園(神奈川)が対戦。昨年の1回戦でも顔を合わせていた両チームの激突は、
前半31分にMF森島司がゴールを挙げた四日市中央工が1−0で勝利。
昨年の2回戦で、2−4で敗れた雪辱を晴らし、8強に進出した。

 連戦による影響か、前半から両チームにミスが目立つ。
前半6分に四日市中央工の迎えた最初のチャンスも、相手のミスから。
FW井手川純が最終ラインの裏に抜けてシュートを放ったが、ボールは枠外へ飛ぶ。
同12分には桐光学園もDFの背後をとったMF池田友樹(2年)がフィニッシュに持ち込むが、こちらも枠外へ。

 四日市中央工業の樋口士郎監督は、「これまでの2試合はロングボールを主体としてくるチームだった。
この試合は、桐光学園は洗練されているので、相手の前からのプレス、攻守の切り替えにしっかり対応しないと、
苦しいんじゃないかと。
この試合は主導権を握られるかもしれないと話して、選手を送り出しました」と振り返る。
両チームとも、思うようにボールをつなげなかったが、より切り替えの意識を高く持っていた四日市中央工は、
井手川にボールを集めながら、ゴールに迫っていく。
前半17分、26分と井手川はシュートを放つが、得点を挙げることはできない。

 前半31分には、エースがおとりになった攻撃から先制点が生まれる。
中盤でボールを受けた森島のトラップが大きくなり、前方へ転がる。
コンパクトに保たれていた桐光学園の最終ラインの裏には井手川が残っていた。
井手川がボールに反応したところ、森島が動きを制止。「(井手川が)触ったらオフサイドになると思いました。
とにかく必死だったので、副審が旗を上げたかは見ていませんでしたが、
DFは止まっていたのでチャンスになると思っていました」(森島)
ピッチ内の動きに集中していた森島は、そのままPAに突進。GKとの1対1を制して、先制点を挙げた。

 井手川がプレーに関与したと主張する桐光学園側は、
執拗な抗議をした湯田哲生コーチが退席となったが、ピッチ内の選手も動揺していた。
FW植木隆之輔(3年)は「オフサイドか、オフサイドじゃないか。そういう微妙な得点だったので悔しかったです」と振り返る。
その後も桐光学園は、低い位置でのミスからピンチを招くなど、ペースをつかめないまま前半を折り返す。

 ロッカールームに戻ると、桐光学園の鈴木勝大監督は「こんなイニシアティブの握られ方は不愉快だ。
絶対に追いついて逆転しよう」と選手たちを鼓舞したという。
しかし、「四中工のCBを引き出して背後を取ることを昨日、今日のミーティングで話していましたが、
後半はその意識が強すぎたかもしれません。
もう少し横パスを入れてもよかった」と反省するように、押し気味に試合を運びながらも攻め急ぎ、
シュートまでいけない時間帯が続いた。

 逆に速攻からピンチもあった桐光学園だが、ようやく30分過ぎからシュートシーンをつくりだす。
後半30分にはロングボールの折り返しを植木がシュート。ボールはゴールを捉えたが、ライン上で相手DFにクリアーされる。
同33分にもFW小川航基(1年)が右にドリブル、足の裏で残したボールに走りこんだMF今来俊介(3年)がシュートするが、
ボールはクロスバーを越えてしまう。
36分にも後方からのロングボールを植木がフリック、スペースのある状態でボールを受けた小川だったが
慌ててシュートを打ってしまい、ボールは左へ逸れて行った。

 後半38分にはゴール正面約25mの位置でFKを獲得した桐光学園は、DF杉本大斗(3年)が鋭いシュートを枠に飛ばしたが、
GK高田勝至(2年)の好セーブに阻まれた。
これで得たCKに桐光学園GK白坂楓馬(2年)も攻め上がり、ゴールへの執念を見せたが、
得点を挙げることはできずにタイムアップ。

「決定的な場面はあったので。そこを決められなかったのは力不足かなと思います」と、
桐光学園の鈴木監督は敗因を分析し、
「大人の力でゲームが決まってしまうようなことは、非常に残念。
ただ、これはピッチに限らず、社会に出てもこういう理不尽なことはあるかもしれないと、
子供たちには正直に伝えました」と、決勝点についてコメントした。

 一方、昨年の借りを返すかたちになった四日市中央工の樋口士郎監督は
「3年生がしっかり後ろで頑張って支えて、1年生が自由にのびのびと戦う。風は吹いている感じはしますね」と、
決勝に進出した2大会前のチームになぞらえ、手応えを口にした。
四日市中央工は5日の準々決勝で、初出場の履正社(大阪)と対戦する。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)


四中工森島、先輩止めV弾/高校サッカー

決勝弾を決めた四日市中央工の1年生ボランチ森島司
決勝弾を決めた四日市中央工の1年生ボランチ森島司

四日市中央工1−0 ◇3日◇3回戦◇ニッパ球

 「触るな!」。四日市中央工(三重)の1年生ボランチ森島司が、上級生に“指図”した。
右サイドバックから出た縦パスで、最終ラインの裏に抜け出す。その前方には3年生FW井手川がいた。
先輩が触ればオフサイド、触らなければ関与なし。
そう瞬時に判断すると、手で制して走らせず自らゴールまで持ち込んだ。
この間に一瞬、足が止まった桐光学園守備陣を尻目に右足で決勝弾。
「よく先輩を止めたね」と聞かれ「オフサイドでしたから」と笑った。

 四日市中央工らしい1年生ヒーローの出現だ。この試合も3人が先発。
樋口士郎監督の弟で、同じく1年から正選手だったJ1横浜の樋口靖洋監督は「年齢に関係なく出番がもらえる伝統がある。
中でも14番(森島)は素晴らしい。2年後が楽しみ」と褒める。中学時代はJ1名古屋の下部組織に所属。
トップ昇格も有力視されたが「四中工からプロになる」と断った。

 地元で有名な「森島4兄弟」の三男。客席で見守った長男大さん(19)は2大会前の準優勝メンバーだった。
その兄が「センスは東海地区で昔から一番だった」と言えば、樋口監督も「技術も戦術眼も1年とは思えない。
(得点時)先輩を止められたのも視野が広いから」と評価する逸材だ。

 「この勢いで最後の国立に立って優勝する」と伝統校を下から突き上げていく。【木下淳】

 ◆森島司(もりしま・つかさ)1997年(平9)4月25日、三重県鈴鹿市生まれ。
3歳でサッカーを始め、鼓ケ丘中時代はJ1名古屋のジュニアユースに所属。
同2年夏に、四日市中央工に進むため地元のヴィアティン北勢FCへ移る。
好きな選手はJ1鹿島MF柴崎。50メートル走は6秒76。173センチ、58キロ。血液型A。

 [2014年1月4日7時27分 日刊スポーツ 紙面から]


四日市中央工を支える上下関係のないサッカー

THE PAGE 1月4日(土)2時0分配信

<高校サッカー>四日市中央工を支える上下関係のないサッカー

四日市中央工業 今大会の成績

 正月の風物詩、全国高校サッカー選手権大会は1月3日に3回戦までの日程を消化。
いよいよ、ベスト8が出そろった。履正社(大阪)のような初出場校があれば、
市立船橋(千葉)のような伝統校もある多彩な顔ぶれとなった。

 名門・四日市中央工業(三重)も、その8強に名前を連ねることとなった。
今年度の四中工はレギュラーの過半数が下級生というチーム。3人は1年生だ。
戦力充実の年とは言い難く、春先からこれと言った結果は残せていない。
冬の選手権に向けて高い期待値を持っていたわけではなかった。
ただ、いざ選手権が始まってみると、なかなかユニークな強さを見せつつある。

 3人の1年生たちは伸び伸びとプレーし、劣勢の時間帯では粘り強さを発揮。
無謀と紙一重である高めのラインコントロールも、うまくハマっている。
初戦は矢板中央(栃木)との殴り合いを制して3-2で快勝すると、2回戦も帝京第三(山梨)に2-0と競り勝った。
そして迎えた3回戦では、地元・桐光学園(神奈川)を1-0と接戦の末に下している。

 「あのときと雰囲気が似てきている」。そう語ったのは樋口士郎監督だ。
ここで言う「あのとき」とは、準優勝を果たした2年前の選手権についてである。
当時も先発11人に2年生が6人、1年生が2人という“若い”チームで、大会前の期待値は低かった。
「無欲、チャレンジャーという空気がある。
チーム内の信頼関係があって、学年、サブ、レギュラー関係なくみんなで戦っている雰囲気がある。
あのときと同じだ」(樋口監督)

 恐らくそれは、主将の坂圭祐にとって最高級の褒め言葉だったに違いない。
まさしく彼が目指していたのが「2年前の雰囲気を作ること」だったからだ。
「あの経験がなかったら、僕なんてどうなっていたことか……」と語る、2年前の体験。
國吉祐介主将(当時)が率先して取り組んだ無用な上下関係の修正と、
その結果として生まれた、先輩が後輩をサポートし、
後輩が先輩をリスペクトしていたあのチームでの日々は、坂に大きな影響を及ぼしている。

 「僕たちは準優勝した“あのとき”、3年生たちに支えられて、本当に伸び伸びとやらせてもらった。
だから今度は僕らがそれをやる番なんです」と言う。もちろん、これは上下関係の否定ではない。
むしろ肯定だ。先輩だからこそやるべきことがある。後輩のために気を配る義務がある。
そして後輩に対して「褒めるところは褒めて、怒らなければいけないときは厳しく怒る」必要もある。
だからこそ、後輩からの敬意を受けられる。それはまさに國吉が自分たちへ示していた態度であり、坂にとっての「目標」なのだ

 その成果は実際によく現れている。ボランチとして先発出場を重ね、桐光戦では決勝点を叩き込んだ1年生MFの
森島司は「(ダブルボランチを組む)村澤(桂輔)さんが本当に気を遣ってくれて、
いろいろ教えてくれるし、自由にやらせてもらえています。
先輩たちは本当に優しいです」と、伸び伸びとプレー。

 普段の部活動でも、例えば練習後の片付けは1年生の仕事という定番の決まりはあるのだが、
「3年生が手伝ってくれてしまうので、『いいですから! 俺らがやっておきますから!』という感じになります」(森島)という雰囲気が
自然と醸成されている。だからこそ、彼らの口から出てくる「先輩たちと少しでも長くやるために」という定番の言葉は、
単なる社交辞令には聞こえない。

 桐光戦(3回戦:ニッパツ三ツ沢球技場)では、実際にプレー面での効用が見えたワンシーンもあった。
31分の先制点の場面である。ドリブルでボールを持った森島のタッチが長くなり、
3年生FW井手川純がそのボールへタッチしようとした瞬間、森島は「触るな!」と叫んだ。このとき、井手川のポジションはオフサイド
触れば確実に笛がなったであろう場面であり、実際に副審は思わずフラッグを挙げていた、
だが、森島の叫びを聞いた井手川はこのボールに関与せず。抜け出した森島がそのままゴールを突き刺すこととなった。

 試合後、「(触れば)オフサイドなのは分かっていたので…」と森島は恐縮しきり。
彼は、たまにいるビッグマウスタイプの1年生では決してない。
だがそんな彼でも、3年生に対して物怖じせずに“とっさの一声”が出てくるのは、
それを躊躇させない雰囲気があったからこそだろう。

 真の伝統とは、単なる保守にあらず。まさにこうして受け継がれていく精神こそ、伝統だ。
「2年前も1回戦と決勝では、まるで別のチームになった」と樋口監督は言う。
3年生に支えられて伸び伸びと戦う下級生たちは確かに伸びてきた。
“あのとき”と同じ空気感をまとったチームが再び国立の舞台に立てるのか。

 1月5日、全国高校サッカー選手権大会は準々決勝を迎える。

(文責・川端暁彦/スポーツライター、編集者)